せんかりぜーしょん、えくすたーなる。


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時効の援用。
2005/04/22 18:58

LESSON 9 時効の援用権者

琴羽:講義が終わった後に書く意味ってあるの?
茜歌:一応、試験前の確認ノートの意味も含めてるから……。
綾音:あと、勉強記録としても。
柚雁:ともかく、講義前に書けるくらいがんばれってことだよー!
茜歌:善処します……。

柚雁:あと時効まで3日……!
茜歌:……とかってよく騒がれるのは、刑事の時効だよね。公訴時効ってやつ(刑事訴訟法250条)。
綾音:今回は、民法上の時効の話です。
琴羽:特に、誰が時効完成を主張できるか、の話。
柚雁:民法にはこういう風に書いてあるみたい。

民法145条
「時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない」

綾音:この「当事者」が誰に当たるのかが問題となるわけです。
茜歌:消費貸借契約上の貸金返還請求権で考えると、主債務者は当然主張できるしー。
琴羽:保証人なんかも、以前から援用権が肯定されているわ。
綾音:時効の援用権者の範囲については「援用によって直接の利益を受けるもの」に限るとされてきました。
柚雁:主債務者はもちろんだし、保証人の人も、主債務が消滅すれば、自分の保証債務もなくなるからー!
琴羽:直接の利益がある、と。
茜歌:で、判例。

☆最二判昭和42年10月27日民集21-8-2110

柚雁:なんか、相続が絡んでごちゃごちゃしてる……。
茜歌:相続が絡むと複雑になって嫌だよねー。しかも、なんか親族間で争ってるし……。
琴羽:はいはい。文句言ってないで。
綾音:まず、取り上げるべきは、譲渡担保設定者による時効援用の可否、です。
琴羽:お金返せないから、譲渡担保は自分の物だ、って言い張ったわけね。
茜歌琴羽さんがまじめだ……。
柚雁:めずらしー。
琴羽:早く終わらせて帰りたいのよ。
茜歌:なるほど。

柚雁:原告がお金貸した人?
茜歌:お金貸した人の相続人かな。で、被告はお金借りて、譲渡担保を設定した人の相続人その他。
綾音:で、原告の請求が第一審で認容されたのに対し、被告が控訴したわけです。
琴羽:そして控訴人(一審被告)は、控訴審で、債務は時効消滅した、と主張した。
茜歌:これに対し、被控訴人は、譲渡担保設定者は物的保証人の立場に立つから、時効を援用できない、と。
柚雁:物上保証人は、自分で債務を負担したわけじゃないから、ってこと?
綾音:援用により、直接の利益を受けるものではない、という主張なのでしょう。
琴羽:譲渡担保権設定者って、物上保証人なの?
茜歌:近い側面はあると思う。
綾音:ただ、控訴審判決は、控訴人らが弱い譲渡担保権設定者であり、物上保証人的地位には立たない、と。
柚雁:弱い譲渡担保権って何!? 強い譲渡担保とか、中くらいの上と担保とかあるのっ?!
綾音:中くらいはしりませんが、弱い譲渡担保と強い譲渡担保の区別は、次のとおりみたいです。

弱い譲渡担保:譲渡担保権実行のために何らかの実行行為が必要である譲渡担保
強い譲渡担保:実行の要件が具備されれば、当然に実行されたものとなり、受戻権が消滅する譲渡担保

琴羽:そうすると、強い譲渡担保の場合、時効を援用とかの意味がないってこと?
綾音:弁済期に弁済されなければ当然実行になりますから、時効援用の余地がないですね。
茜歌:本件は、弱い譲渡担保だったから、時効の援用可否が問題となったと。

柚雁:で、控訴審は、弱い譲渡担保権設定者は、時効消滅により直接の利益を受けないからだめって言ったんだ。
茜歌:当事者は、譲渡担保権設定者の承継者だけど、同じかな。

琴羽:それに対して、最高裁は、これを破棄。
茜歌:弱い譲渡担保権設定者は、消滅時効を援用できるといったわけですっ。
綾音:まず、物上保証人は、主債務者の消滅時効を援用できるといっています。

「他人の債務のために自己の所有物件につき質権または抵当権を設定したいわゆる物上保証人も
 被担保債権の消滅によって直接の利益を受ける者というを妨げない」

茜歌:物上保証人一般の話は傍論だけども。
柚雁:で、弱い譲渡担保権設定者も、物上保証人にあたるってことだねっ。

弱い譲渡担保権設定者は、
「被担保債権の消滅によって利益を受けるものである点において、物上保証人となんら異るものではない」

綾音:このようにして、時効の援用権者の範囲は広げられてきたと言えます。
柚雁:その他、担保物件の第三取得者とかも問題になってきたんだけどもっ。
綾音:担保物件の第三取得者は、かつては援用を否定されていましたが、現在では肯定されていますね。
琴羽:最判48年12月14日民集28-11-1586、かしら。
綾音:ですね。この流れに対して、歯止めをかけたのが次にあげる判決です。

茜歌:あのさ。
琴羽:なによ? さくさくいくわよ?
茜歌:さっきから、「主債務者」が、主催武者に変換されて可笑しいんだけども。
柚雁:阿呆IMEー。
綾音:ここのPC、学習したことを忘れるんですよね。起動するたびに。
琴羽:再起動すると、頭まっしろなわけ。
茜歌:辞書登録もできないし……。
柚雁:使えないPCめー!

綾音:雑談も挟んだことですし、次にいきましょう。

☆最一判平成11年10月21日民集53-7-1190

柚雁:えっと、なんかごちゃごちゃしてる……。何か、怖い人が出てくるのはわかったよ!
茜歌:怖い人が出てくるのも、重要な話なんだけども……。
綾音:やはり、まずは時効の援用権者の範囲について、ですね。
琴羽:今度は誰?
茜歌:えーっと、後順位抵当権者。
綾音:後順位抵当権者が、先順位抵当権者の被担保債権の消滅時効を援用できるか、という問題です。

柚雁:後順位者は、先順位者の債権が消滅して抵当権がなくなれば、自分の取り分がふえるよ!
琴羽:問題は、それが判例の言ってきた、「直接の利益」のあたるか。
茜歌:得はしていると思うけど、それが、直接的利益とはいえないんじゃないかなぁ……。
柚雁:でも、そんなこといったら、抵当不動産の第三取得者だって「直接」じゃない気がするんだけどー!
綾音:そうですね……。判例が援用権者を広く認めてきた関係上、「直接」概念は形骸化している気がします。

琴羽:で、最高裁はなんて言ったの?
綾音:最高裁は、これは直接的利益にはあたらない、と言ってます。

「先順位抵当権の被担保債権が消滅すると、後順位抵当権者の抵当権の順位が上昇し、
 これによって被担保債権に対する配当額が増加することがあり得るが、
 この配当額の増加に対する期待は、抵当権の順位の上昇によってもたらされる反射的利益に過ぎない」

柚雁:でたっ! 反射的利益!
茜歌:行政訴訟とかでよく出てくるよね……。法律上の利益とは言えない、みたいな。
琴羽:じゃあ、抵当不動産の第三取得者のは反射的利益じゃないって言うの?
綾音:おそらく、第三取得者の場合、不動産の喪失を免れるという利益を重視するのでしょう。
茜歌:でもさ、第三取得者の利益について議論するとき、よく、「抵当権を覚悟してる」っていうよ?
柚雁:その分、安く買うしー!
綾音:そうすると、やはり積極的利益は無い、ということになりますが……。
茜歌:後順位抵当権者だって、先順位抵当権者が居なくなる、ていうのは重要な直接的関係だと思うしー。

綾音:学説上は、援用を認めると、先順位抵当権者の登記が抹消されてしまうことが問題視されています。
茜歌:なるほど。登記が消えてしまうと対世効っぽくなっちゃうから。
琴羽:一般債権者との優先順位をどうするんだって話ね。
柚雁:時効の援用は、当事者間でしか働かないって言われてるもんー。
茜歌:これが、抵当権者が三人居た場合とか、すごい複雑になるかも。
綾音:その辺りの考慮も必要ですね。

琴羽:そう考えてくると、結局、後順位抵当権者には援用は認められなさそうかしら。
茜歌:ぽいねー。
綾音:債権者代位権で、時効の援用を代位する、という手段はありますけれども。

柚雁:で、怖い人の話はー?
茜歌:怖い人の話は、本件では怖い人が脅して、時効の中断をさせなかったっぽい、っていう事情があって。
綾音:そういう人の時効援用は信義則に反する、というわけです。
柚雁:ほへー。

琴羽:とりあえず、これで全部?
茜歌:一応、書いておかなきゃなことは書いたつもりだけども。


-Extra Lesson-

茜歌:弱い譲渡担保の方の判例だけども。
綾音:はい。
茜歌:これって、時効が完成する前に、訴えを提起してるよね。
綾音:そう、ですね。
茜歌:出訴って時効中断事由にならないのかなぁ?
琴羽:一審判決まで時効完成前に出てるみたい。
柚雁:でも、時効の中断事由の条文には書いてないしー。
綾音:それに、仮に認めるとしても主債務者に通知をしないと(155条)。
茜歌:でもさ、なんとなく、被告(担保権設定者)に対する時効中断は認めてもいいような気がするんだけどなぁ。
琴羽:設定者との関係では、権利の上に眠っていたわけではない、ってことかしら。
茜歌:そういうことー。


<参考文献>

星野英一・法学協会雑誌85-10-81,1968
川井健・民商法雑誌58-5-129,1968
森田宏樹・民法判例百選1[第五版補正版],pp.92-93,2005

カテゴリ:民法判例演習1

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